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「......そんなのは悠樹が勝手に思ってしゃべってるだけだ」
「そうだよ。でも、これが私から見えた全てだから」
「......ただの夢物語みたいなものだ」
「そう。だけど、ユメモノガタリでもいいんじゃないかな〜」
「それは、お前がそう思いたいだけだろ」
「うん、そうだね。そうかもしれない」
会話はそこでピタリと途絶え、二人の間に微妙な空気が走った。そして、まるで全てをよんでいたように、始業のチャイムが鳴った。茉紗は小さく手を振って、稔の隣へ帰っていった。その後は、放課後までずっと茉紗が言ったことが頭から離れなかった。
_______
「はぁ...行くか」
深いため息をついて、奈々瀨は旧校舎へと歩みを進める。下校時間となった昇降口には生徒がごった返していた。その中をいつもの仏頂面のまま、かきわけて進んでいく。
_結局、稔にはあれきり話しかけられないでいた。彼女がもう下校したのかどうかさえも知らない。
旧校舎は昼間と変わらず、静かにひっそりと佇んでいた。目指す場所はあの鏡のあった教室だ。どうしても、あの綺麗な鏡のことが気になって仕方なかった。午後の間ずっと考え続けて、ようやく違和感の正体がわかったような気がする。その確認のためにも、まずは教室へ向かわないと。
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