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「こんなところって...。別に何でもいいだろ」
奈々瀨の逸らした視線の先が気になったのだろう。その先を追いかけて、冷華は声を上げた。
「...鏡?」
「あっ、ホントだ〜。こんな大きな鏡を熱心に見つめてどうしたの?......もしかして、ハゲとか」
「悠樹てめえ殺すぞ」
「も〜、冗談だよぉ。でも、そんなにムキになって言われると怪しくなっちゃうよね〜」
茉紗はからかうような口調でそう言って、楽しげな笑い声を上げた。彼女だけは純粋なおせっかいだけでここに来たのだろう。後ろの冷華は未だ不審そうに奈々瀨のことを見ていたし、稔のほうはずっと居心地が悪そうなままだ。もう、怒っても...泣いてもいないようで、ほんの少しだけ安心した。
「お前が信じてんなら、ハゲでもなんでもいい。いちいち言うのも、面倒くせえし。......とりあえず、俺がここにいる理由もわかったんだし、悠樹二人を連れて今すぐ帰れ」
「えっ、いいの.........って、違うよ〜。もう、ナナくんはずっとズルだ」
「ああ、それでいいさ」
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