第九章 「仲良し大作戦3 side奈々瀨」

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 靄を所々に残して、輪郭の不確かな霊は、また歩みを進めた。そうして、進んだ先で一度歩みを止め、真っ黒な顔を下に向けた。 (?一体何がしたいんだ...) 顔を下げた先へ、片手を上げて、何度か黒い手を握ったり開いたりしていた。また、動作の確認だろうか。それにしても、この開いた距離でどうして。その時静かにそれが、奈々瀨と目を合わせてニヤリ、と深い笑みを浮かべた。今までで一番強い悪寒が走って、背後の稔へとっさに叫んだ。 「しゃがめ!来るぞッ!!」 言いながら、自身も体勢を低くする。刹那、奈々瀨の頭上を鋭い衝撃波が通り抜けていく。遅れた髪の一部が宙に舞うのが見えて、茉紗の姿と彼女の発言を思い出し、顔をしかめた。 (ハゲてないよな...)  衝撃は教室を綺麗に半分にするように、美しい直線のまま通っていき、そして、後ろのガラスにぶつかった。やはり、この旧校舎にあったのだから、窓ガラス一つでさえも古くなっていたのだろう。衝撃波に触れたところから、ヒビが入り、やがては甲高い音を立てて、粉々に砕けた。
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