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「な、ななちゃん...!」
「どうした。頭でも打ったのか?」
奈々瀨が振り向けば、稔も怪訝な瞳で同じように後ろを見つめていた。「どうしたんだ?」と、もう一度問いかければ、割れた窓の先_廊下の方を指さして言った。
「そのあたりから、人の声が聞こえるわ」
「も〜、いきなりガラスが割れるとか聞いてないよ〜」
「......びっくりした」
高い音を立てて、割れたガラスを踏みつけながらあらわれる茉紗と、その後ろでご丁寧にガラスをひと破片ずつ避けてくる冷華。何とも対照的な二人の登場に、奈々瀨と稔は揃って目を見開く。
「どうして、お前らがここにいるんだ?帰ったんじゃねえのか?」
「...ごめんなさい。実は途中で二人のことが気になって...」
「そうそう。ミノリちゃんも気づいたらいなかったし〜。そしたら、目の前がパリーンって」
二人は回想を終えて、顔を見合わせた。それを聞き、面倒事が増えたと頭を抱える奈々瀨と心配そうに彼女たちに駆け寄る稔。再会を喜んでか、この状況下でも嬉しそうに抱き合った後、稔はおもむろに二人の手を取ったり、距離を少し取って全身を眺めてみたりと何かをしているようだった。やがて、血相を変えて、茉紗の片腕を取った。遠目に見てもわかった。怪我をしているのだ。
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