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「こんなもんだろ。悠樹、あんま腕振り回すなよ」
「は〜い!」
元気良く包帯が巻かれた方の手を挙げる茉紗。先が思いやられるが、まあ今のところは大丈夫だろう。一連の流れを傍観していた二人は感心した様子でこちらを見ていた。
「ナナちゃん、すごいのね」
「ああ、これくらいは自分でどうにかしねえと真っ先に死んじまうからな」
満面の笑みとともに送られた言葉に、思わず目線を逸らして口早に返す。そして、後のことを茉紗に任せ、奈々瀨は事の元凶へと目を向ける。
旧校舎を荒らしても、まだ何か不満が残るのか、異形の怪物はバランスの悪い大きな頭をずっと傾けていた。やがて、それがこちらへ向き直る。真っ黒に塗り固められた、人間の肥大した悪意の象徴のような造形をしていた。彼の攻撃は未知数だ。どれくらいの危険があるのかもわからない。更に言えば、倒し方もわからない。
(さて、どうする...)
今までのやり方では駄目だ。きっと、先程のように弾かれてしまう。何か違う突破口はないだろうか。それこそ、全く違う角度から___。
「...結局、どうして鏡が割れたんだろ?」
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