第四章 「事故の一ヶ月前 前編」

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「何ですか。僕がついてくるの嫌なんですか?」  冷華が言った言葉を違う意味に捉えたらしいリュカが、拗ねたような表情で口をとがらせた。全く、表情がころころ変わる子だな、と冷華は思う。 「...違うよ。私だけじゃなくて、リュカも現世に行くことができるのかなって思って」 冷華がそう言うと、リュカは自身の勘違いに気づいたらしく、自分の頭をコツン、と叩いた。 「あっ、そういう意味だったんですね。ごめんなさい。僕、勘違いしちゃって。物事をすぐ悪いほうに考えちゃうんですよ」 可愛らしく舌を出しながら謝った後リュカは続けて、 「それなら、答えはイエスです。普通の天使なら、現世に行くには余程のことがないとダメなんですが、僕は違いますからね」 そう、先程の問いの答えを返す。
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