29人が本棚に入れています
本棚に追加
光の中を落ちていき、少し時間が経過した後、ふいに体が軽くなるような感覚があり、冷華は自身の閉じていた目を開く。
「...ここは、私の部屋」
冷華は慌ててベットの上から降り、部屋のカレンダーを見る。
(今日は、2019年の5月12日...)
カレンダーの日付から、ここが本当に事故の一ヶ月前なのだろう、と思い冷華は安堵する。
「...本当に戻ってこれたんだ」
正直なところ、リュカのあの一ヶ月前に戻れるなんていう荒唐無稽な話を完全に信じきっていたかと言われれば嘘になる。でも、冷華は戻れるというリュカを信じるという可能性にかけたのだ。
(リュカがそんなしょうもない嘘をつくような子には見えなかったし...)
だが戻れたことは良いが、冷華にはもう一つの不安なことがあった。
「...ここから、どうやって事故をなかったことにすればいいんだろう」
冷華は一言そう言う。
(......?)
数秒後、彼女は誰かを探しているかのように辺りを見廻すが、周りには誰もいなかった。
(今、リュカがいたような気がしたんだけど...ただの勘違いかな?)
冷華が考え込んでいると、一階から声が聞こえてくる。
「れいちゃん、ご飯ができましたよ」
「...今、行く」
冷華は、それを聞き自分の部屋をあとにする。その時、冷華の部屋にあるカーテンが、窓が閉まっているのにもかかわらず静かに揺れた。
「冷華ちゃん、ごめんね」
いつの間にか、窓枠に腰掛けたリュカが謝罪を一つ零す。リュカはその後、悲しげな表情を見せる。
「僕にだって変えられないものはあるんだよ」
変えられないもの、とは何を指しているのか。それを冷華が知るのはまだ先のことである。
最初のコメントを投稿しよう!