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一年をループする世界に、人はいつからか慣れてしまった。
一年で作り出されるありとあらゆる新しいものは一年で戻ってしまうから、いつからか人は記録媒体は衰え、記憶を重宝するようになった。
人の記憶ほど便りにならない時代はもう来ない。
かくいう私と『益坂』が勤める記憶媒体人造保管管理局は、回ってきた情報を一年間でなるべく多く記憶し次のワタヌキに全てを書き出しておくことで、毎年毎年蓄積されるわずかな新情報を円滑に保存出来る国家直轄の組織だ。
そう。
何故か記憶だけは、何周しても消えることがなかった。
そんなこんなで私は今日も、二十四歳で止まった体で電車に乗った。
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