繰り返せ

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 路地裏を抜けて、さらに奥へ進んで十分と二十四秒、錆びたドアノブを捻る。  「はぁい、よく来たね」  と私達を迎えたのは覇気のない青年だった。擦りきれた白衣は毎年リセットされるはずなのに、年々汚れ方が酷くなっている気がするのは気のせいだろうか。青縁眼鏡に短髪姿――髪色に見覚えがあると思ったらかつてのクラスメイトと全く同じだった――という変わらないスタイルは、私に子供時代を想起させるに十分だった。何せ、今まで仲が良かった友人達の特徴が詰め込まれているのだ。考古学の檻に入った私でも、毎年ここに来れば思い出を忘れていないことを再確認できる。それが密かに嬉しいのは内緒の話だ。
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