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美容院
私、戸田小春。
これは本名。
もう1つの名前はMiU。
こちらはAV女優としての私の名前。
もっぱら呼ばれるのは後者の方だ。
AV女優になり、3年の月日が流れた。
きっかけは3年前。
当時、しがないOLだった私は休日、気ままに1人でショッピングを楽しんでいたところを現在の事務所にスカウトを受けた。
「MiUちゃん、今日は休み?」
「ううん。明後日から3日、撮影だからさ、エステやらメンテ。ついでにちょっとショッピングして本屋とか寄ったとこ」
行きつけの美容院の鏡越しに、担当の美容師、徹平に笑顔を見せる。
私と同い年の23。
AV女優としてデビューして、私は胸元まであった髪を切り、茶色いショートヘアにした。
長い髪の女優は多いし、小顔で愛嬌のある笑顔が映えるだろう、と社長が言ったから。
「大変だねえ。じゃ、今日はこれからどうするの?」
「んー、特に考えてはないけど。バーでも行こうかなあ、あ、でも、なにか食べに行こうかな、少しお腹すいた気もするし」
「だったらさ、一緒に食べない?MiUちゃん。奢るしさ」
「えー?別にいいよ。自分のぶんは払うし」
「近くのカフェかなんかで時間潰しててくれる?後で連絡するし」
「んー、わかった」
髪を染め直し、軽くカット、トリートメントを終えた私は先程購入した洋服やアクセサリー、新作の楽しみにしていた連載のコミックや書籍などの入った袋を抱え、お会計をした。
カフェで、スマホで動画を観ながらぼんやり過ごす。
自分のAVとかじゃない。
チャンネル登録している、面白動画。たまに、犬や猫の動画。他にも色々観てたりはする。
「お待たせ」
店内の最奥のテーブルに座る私の反対側に徹平が座った。
「お疲れ、徹平。なんか飲む?」
「や、俺はいいや。行こ、MiU」
うん、と飲みかけだった、フレッシュなオレンジジュースをストローで啜る。
真夏の喉を清々しく潤してくれる、少ししょっぱくて、程よい甘さ。
グラサンを掛け、徹平の後を歩き、カフェを後にした。
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