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1.事情聴取
「黙ってないで、何とか言ったらどうなんだ!」
「見てた人がいるんだよ!持ってるならここに出しなさい!」
僕は今、事情聴取の真っ只中だ。
けれど、警察の厄介になっている訳ではない。
高校の校長室の中で、だ。
校長は、校長席のどっしりとした椅子に座り、机に両肘をつき指を組み、黙って僕を見ている。
教頭と生活指導の教師が、焦れて怒鳴り始めた。
僕がドアから少し入った場所で突っ立ったまま、ずっと黙っているからだ。
「身に覚えがないのなら、ちゃんとそう言え。黙ってても解決しないぞ」
隣に立っている担任教師の佐藤が、僕を諭すように言った。
佐藤は、四十代半ばの男性教師。
僕が一年生の時にも担任だったが、三年になってまた担任に返り咲いた。
普段から素行が悪い奴等にも、勝手に決めつけて叱るタイプではない。
無論、悪い時は説教もするが、問題の根っこの部分を理解しようと努めてくれる姿勢は嫌いじゃない。
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