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「どうかな、木引くん」
「ん?」
日吉さんは僕の顔を覗き込むようにして尋ねる。
まずい、回想にふけっていて聞いてなかった。対面での会話でこれほど失礼なことはない。
どう訊き返せば波風が立たないかと悩んでいると、彼女は声が小さくて聞き取れなかったと思ったようで「だからさ」とはっきりと言い直してくれた。
彼女の瞳が僕を捉える。それから続いたセリフはもちろんしっかりと聞き取れた。
けれど僕は自分の耳を疑ってしまう。
「助けてくれたお礼がしたいの。今度の日曜日、空いてない?」
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