ことわり

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 今度はバタバタと足音を巻き散らし、一人の女生徒が教室へ駆け込んで来た。私の親友であるユメである。彼女の声音は、頭頂部から出ているのではないかと思うほど高音で可愛いのだ。 「ハナさぁん! 一瞬でいいから、タキさんを借してくれませんか?」  乱れた呼吸で、ユメの肩が上下に揺れる。いったい何があったのか。 「どうしたのユメ? そんなに慌てて」 「タキさんを……借してちょ」  床に膝を落としたユメは、少しばかり目尻を湿らしていた。 「タキ君ならいないよ」 「そ、そんなぁ」 (そこまで切羽詰まってタキ君を求めるとは、よほどのことか?)
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