二章

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「えっ、どういうことですか」 絞り出した言葉は驚くほど小さく、震えているのが自分でもわかった。 「突然すみません。混乱されるのは無理もないと思います。」 「こちらに見覚えはありますか。」 崎原さんは手元に持っていた紙袋から何かを取り出し、こちらの方へ差し出してきた。 ジップロックのような袋に入っていたのは見覚えのある指輪で、同じ物が袋をつかむ自分の左手にも光っていた。 「え、これって。」 自分の指に光る指輪と外して袋の中の指輪の内側を覗き込む。 どちらの指輪にも同じ箇所に【TAICHI & AI】と刻まれていた。 「これは愛にあげた指輪です。」 言葉を絞り出すようにつぶやくと、谷元さんはまるでわかっていたかのように「そうでしたか」と呟くがそのまま室内は無音に包まれる。 同時に、昨夜までの愛の姿を思い出そうとするも脳が混乱しているのか指輪をしていたかどうかなんて思い出せなかった。
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