一章

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寝相の問題だったのか左の掌に少しの振動を覚えて重たい瞼を開ける。それと同時にスマホ画面のライトが直接目に刺激を与えてきて思わず開きかけた瞼を閉じる。 しかし、ベッドの上に置かれたままのスマホは振動が止まることはなく、薄目を開けて画面の表示を確認する。 電話がかかってきた画面だというのはすぐに理解できたが、03で始まる固定番号に心当たりはなく、普段であれば一度無視して番号を確認してから連絡していたのだろうが、寝起きで思考が停止していたようで《通話》と表示されているところを触ってスマホを耳元へ持っていく。 「はい、杉山です。」 「突然、夜分にご連絡申し訳ありません。私、冬河(とうが)警察署の谷元と申します。杉山太一様のご連絡先で間違い無いでしょうか?」 「え、はい、杉山ですけど。警察ですか?」 「はい。大変お伝えしにくいのですが、杉山太一様は杉山夢様の旦那様でお間違い無いでしょうか。」 「あ、はい。そうです。」 「ありがとうございます。実は、その杉山夢様のことでお話がございまして。明日に冬河警察署までお越しいただくことはできますか。」 突然の話に動揺が隠せず、ひとまず次の日に警察署へ向かうことを了承してスマホの《通話終了》ボタンを押す。
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