二章

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たった1〜2分くらいの出来事だったと思うが、警察署のなかでどこにも並ばずキョロキョロしているのは浮いて見えるようで、奥の部屋から出てきた警察官の人に声をかけられた。 「よければ御用件伺いますよ。」 髪はほとんど白髪ながら髭はなく、170の自分よりやや背が高そうに見えるスタイルの男性警官は柔和な雰囲気で、こんな人に取り調べされたら有る事無い事言ってしまいそうだなと感じた。 「あ、すみません。昨夜にお電話を頂いてきた、杉山と言います。内容まで詳しく聞けなくてどこに行けばいいかわからないんですが。」 「杉山さんですか、杉山太一さんですか?」 メモをしているわけでもなさそうなのに名前をパッと言い当てられ呆気に取られたが、何か間違えられたりしても嫌だと慌てて免許証を取り出す。 警官は免許証の写真とこちらの顔を4〜5秒見比べる。その瞬間は最初の柔和な顔から一転、厳しく審査するような表情と眼差しで、もし何か突っ込まれたらどうしようとありもしないことを考えて少し焦る。 そんなこちらの気はいざ知らず、警官は再び柔和な表情に戻り、「こちらへ」と最初に出てきた扉よりも奥の扉を押し開け、部屋に入るように促す。
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