二章

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言われるがままに部屋に入ると、至って普通の会議室のようで、ドラマで見るようなこぢんまりした取調室のようなものでよかったと安心した。 部屋の中は長机が2つくっついて並んでおり、向かい合って座るとまるで面接が始まりそうな配置だった。 警官は自分も一度部屋に入って扉を締めてから思い出したように一度頭を下げる。 「すみません。私、若林と申します。名乗るのが遅くなってしまい申し訳ありません。名刺は持っていないものですのでこちらで。」 頭を上げるとそのまま警察手帳を取り出し、開いて見せてくれる。 そこには、顔写真と共に【若林駿(わかばやししゅん)】と書かれており、初めて見る警察手帳に心の中で、本物だ、などと思いながらどうしていいかわからずとりあえず確認したと言う意味を込めて会釈をする。 「では、他の者を呼んでまいりますので奥の方に座ってお待ちください。」 若林はそう言い、手帳をしまいながら部屋の外へ行ってしまった。 普段警察署になど来ないので、この対応が普通なのかそうでないのかは自分だけではわからないが、他の列に並ぶ人からの視線が痛いほど刺さっているということを考えれば、少なくとも普通ではないことなのだろうと思えた。
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