開け、エクセル

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その瞬間、スイッチを切り替えたかのように、高倉の憤怒の形相が遠慮がちで弱々しいものに変わった。 胸ポケットから慌てて社用のスマホを取り出して電話の向こうに大げさな会釈をする様子に、執務室の面々はまた始まったよという顔をするが、お辞儀に夢中な男は気づかない。 新戸は上司の言うことに基本的には忠実だったが、この豹変ぶりには今でも戸惑いを隠せず、何となく目を逸らした。 「おはようございます、犬養課長。はい。……はい!承知いたしました。ただちに伺います」   高倉はスマホを胸ポケットにしまうと勢いよく立ちあがり、 「昼までに全部入力しておけ」   と指示して早足で歩き出したが、何かを思い出したように立ち止まり、首だけ新戸に振り返った。 「ミスの件、また人事に報告しとくからな。使えねえ若手よこすなって」 そう言い残すと、高倉はフロアを出て行った。
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