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ユキトはスマホのナビを見ながら車を走らせていたが、画面が途中で回転し始めた。ホルダーに固定していたにも関わらず、スマホの画面は何度も上下が入れ替わり、ナビもその度に読み込む状態になった。
「どうなってんだ?」とユキトは言いながら、ナビの最短ルートを見て車を左折させた。
「道当たってるのか? 俺たちここまで真っ直ぐ走ってたよな? 曲がったりしなかった」タイチが言った。俺もユキトも同じ意見だったが車は国道から外れてしまった。
道なりに進むとカーブに差し掛かった。
曲がり切るとまたカーブが続いていた。そしてもう一度。
「引き返そう」と俺が言ったその時だった。
車が風に煽られたかの様に急に横に強く揺れ始めた。
ユキトがハンドルを握りしめて力を込めていた。
「持ってかれる!」
「おい! 前見ろ! ユキト!」タイチが前方に指を向けた。
ライトが照らす先が一瞬だけ目に映った。
女が立っていた。黒ずくめの細い女だった。
ハンドルにしがみつくユキトが叫び、車は大きく傾いて横転した。
俺たちは叫びながらシートや手すりに捕まった。
見えていた風景が逆さまになった。
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