壱「曲がり道」

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ユキトはスマホのナビを見ながら車を走らせていたが、画面が途中で回転し始めた。ホルダーに固定していたにも関わらず、スマホの画面は何度も上下が入れ替わり、ナビもその度に読み込む状態になった。 「どうなってんだ?」とユキトは言いながら、ナビの最短ルートを見て車を左折させた。 「道当たってるのか? 俺たちここまで真っ直ぐ走ってたよな? 曲がったりしなかった」タイチが言った。俺もユキトも同じ意見だったが車は国道から外れてしまった。 道なりに進むとカーブに差し掛かった。 曲がり切るとまたカーブが続いていた。そしてもう一度。 「引き返そう」と俺が言ったその時だった。 車が風に煽られたかの様に急に横に強く揺れ始めた。 ユキトがハンドルを握りしめて力を込めていた。 「持ってかれる!」 「おい! 前見ろ! ユキト!」タイチが前方に指を向けた。 ライトが照らす先が一瞬だけ目に映った。 女が立っていた。黒ずくめの細い女だった。 ハンドルにしがみつくユキトが叫び、車は大きく傾いて横転した。 俺たちは叫びながらシートや手すりに捕まった。 見えていた風景が逆さまになった。
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