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「ほら」
部屋に着き床に座ったところで、ユウリは小さな小箱をアキノに差し出す。
アキノが不審に思いながら受け取ると、ユウリはいつもの様にオレンジジュースに手を付けた。
何だろうとその小箱を開く。
中には赤い指輪が入っていた。
赤い指輪
「え………えっ!?!?!」
アキノはドキリとして指輪を二度見する。そして説明を求める視線をまだコップを持っているユウリに送った。
「お誕生日おめでとう」
その言葉の意味を理解するのに3秒掛かった。それでやっと今日の日付を思い出す。
「あ…今日俺誕生日か…」
今更?とユウリはツッコむが、そんなもんだろうなという感情もとれる。
「てっきり婚約指輪かと…」
「それならもっと良いやつ贈るよ」
アキノは安堵の溜息を吐いたが、嬉しいのは当たり前だ。
「ありがとう。…でも、もうちょっと情緒ってもんないん?」
「ん?ああ悪い」
悪いと思ってないやつだ。
アキノはその指輪を右人差し指に嵌めてみた。赤いそれは、良い感じに嵌る。
「ぴったり。よく指のサイズ知ってたね」
「あんだけ指絡めさせたら大きさくらい染み付くさ」
さらりと惚気られた。さっきからだがそういう所もまた愛しいと思うので、少し自分に盲目感も感じる。
「本当ありがとう」
無意識に、にふと笑った。
右人差し指に指輪を嵌めて電灯にかざす。スケルトンの指輪は、キラキラと光を返した。
「次のユウリの誕生日、俺も指輪プレゼントする」
「ん。楽しみにしてる」
小さく笑う彼を見て、せめて本物の宝石の指輪をあげたいな、と考える。
それはアメジストが良いだろう。あの鉱物は安いけど、ユウリの眼の様に綺麗だから。
それが婚約指輪になったら、もっと良いんだけど。
ユウリの人差し指が赤い指輪をなぞる。その感覚にこそばゆくなった。
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