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「なに、あらたまって?」
「彼氏いるなんて言ってしまったのは嘘です。ごめんなさい」
頭を下げて顔を上げると、何事もなく箸を持ってすき焼きを食べ続けている和久井君がいて面食らう。
「あの……」
「俺の勘、当たったな。なんとなくそうかなって思ってた」
「ばれてましたか」
じっと見つめられて謝るしかない。
「ね、なんで嘘ついたの?」
「それは……」
「俺と親しくなりたくないから?」
押し黙ったら、和久井君が目を細めてゆっくりと言った。
「葉波さんっていいよね」
「なに急に」
「友達の為にケンカ売ったり、彼氏いなくてもスキンケアがんばったり、俺みたいなやつにも誠実だ」
「それって褒めてます?」
「俺、そういうところ、好き」
「……ありがとう、ございます」
言葉はあれだけれど、好感はもってくれているようだ。人に言われたことやスキンチェッカーに言われたことを気にしてばかりいる自分に少し疲れてもいたからそのあたりを“好き”と肯定してもらえたのは嬉しくて顔が赤らむ。
「暑いよな。上の脱いだら?」
視線をかぎ編みボレロに向ける和久井君。
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