この古い家の話

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「じゃあ、俺たちがもう少し仲良くなったら、この家を綺麗にしよう。お化け屋敷なんて呼ばれるのは嫌だろうし」 「うふふ、そうね、本当にそうしたい。でも、お化け屋敷と呼ばれても実はそんなに嫌じゃないのよ」 「えっ!?」 舞はクスッと笑い、律を見る。 律も舞を見つめたが、何て美しい子なんだ、と照れてしまい、思わず目をそらす。 「ね、ちょっと来て。私の部屋。趣味のものでいっぱいなんだけど、見て欲しいの」 2人は立ち上がり、2階の舞の部屋に入る。 至って普通の女の子の部屋…と言いたいところだけど、本の数が異様に多い。 「すごい本の数だね、これ」 「そうなの、まだ自分も読んでない本もあるんだよね」 背表紙のタイトルを、並べられてある順に読んでいくと、「本当にある怖い話」「街で起こった不思議な話」など、怖い話や不思議な話の本がずらりと並んでいる。 本棚に入らなかったものは平積みになっていた。 「どうせ、私ひとりだし、隣の部屋は、本の物置にしちゃおうかと思ってる最中」 「怖い本ばかりだね、まぁ、俺も怖い話とかは好きだけどさ」 「そうなの!?あなたの怖い話を聞かせて欲しいわ」 律は苦笑いして、左右に首を振った。 「いやいや、これだけ、大量に怖い本を読んだなら、俺の話なんて聞いたことある!って思う程度の話だよ」 「それでも、聞きたいわ!久しぶりのお客様だもの。 律さんのお話聞かせて欲しい」 「律でいいよ。……うーん、仕方ないなぁ。ほんと、そんな怖い話じゃないよ?」 「全然いいの!嬉しい。私の事も舞と呼んでね」 真っ黒のサラサラの髪に、真っ白な肌、そして、長いまつ毛が縁取る大きな目、そして、形のいい鼻に、赤い唇。 その大きな目を潤ませて、喜ぶ姿はとても綺麗で可愛い。 お化け屋敷なんかじゃない、家から出られない美少女が自分と友達になって欲しいといい…少し仲良くなってくると自分だけのモノになった気がした。 「ね、どんな話?」 「んー、そうだな、えっと先輩から聞いた話なんだけどさ…」 律は、ベッドを背もたれにして座り込むと、話し始めた。
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