ぱた、ぱた、ぱた。

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 ***  彼女に関して、変わっていると思うことがもう一つある。それは、彼女がとても怪談好きだということ。でもって、その怪談の内容が大抵“誰も知らないお話”ばかりなのである。  あるいは、既存の怪談話や都市伝説の少し斜め上を行っていると言えばいいのだろうか。 『花子さんはね、本来ならそっとしておいてほしかったんですよ。だってずっとトイレにいるなんて、普通の女の子なら嫌じゃないですか。でも、トイレに追い詰められて殺された女の子って方が面白いってみんな思ってしまって、それで本当に彼女はトイレから出られなくなってしまったんです。だから、彼女が“遊びましょ”と言った子を神隠ししちゃうのも当然なんですよ……自分を怪異にしたみんなを恨んでるし、面白半分で自分を尋ねてくる人を好きになるはずがないんですから』 『きさらぎ駅ほど悪質な怪談はないと思うんです。だって、都市部に住んでたら電車に乗らないことなんかほとんどないじゃないですか。そして、電車って一度乗ったら駅につくまで降りようがないもので、それがいつの間にか異世界に運ばれれしまうなんてことになったら逃げようがないでしょ?まだ異世界エレベーターの方がマシです、キャンセルのしようがあるから』 『猿夢って、滑稽ですよね。アレが猿に見えてるんだから、ニンゲンって馬鹿だなあって思います。ようは、進化の隣人が怖いから悪役にしちゃえってお話でしょ?夢に引きずり込んで自分を殺す対象として、無自覚に猿を設定してるんです。そんな人間のドロドロした悪意が混ざって滲んで、もうあれはイキモノなんて呼べる姿をしていないのにね』  彼女の考察や発言は予想できないものが多かったが、それでも妙な説得力を持っていた。だから、友達の一人が尋ねたのである。澪ちゃんって、霊能力者なの?と。  すると。 「違うと言えば違うし、そうと言えばそうなんでしょうね」
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