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初めての彼氏
お客様を待っている間、同じく待機中らしい、優太と仕事終わり、飲みに行こう、と約束した。
優太とはニューハーフの風俗嬢、優太はたまにゲイビのモデルと男性相手の風俗をしながらも変わらず仲が良く、時折、仕事後にご飯に行ったり飲みに行ったりするし、休日もたまに一緒に遊んだりもする。
優太には彼氏がいる。ニューハーフになる前、優太から紹介された、1つ上の彼氏がいた。
まだ当時、男性の体だった私。
私にとって、初めての彼氏だった。
優太の彼氏は優太が性同一性障害であることを理解していて、私の彼氏、誠もそうだった。
女性になった私を、可愛い、と褒めてくれて、嬉しかった。
けれど、サプライズで誠に渡されたスペアキーで誠の部屋を訪れた私は玄関先で暫く立ち尽くした。
肩まで伸びた髪は淡いブラウンにし、優太とショッピングした際に選んだノースリーブのワンピースにそこまで高くないヒール。
優太と遊んだ帰りにケーキを買ってきた。
部屋中に響く喘ぎ声に息が詰まりそうになりながら、恐る恐る、ヒールを脱いで部屋の奥へ向かうと、誠は見知らぬ男性とベッドの上で行為の真っ最中だった。
誠に抱かれて、激しく悶えるその姿と、重なり合い、行為に夢中な二人に釘付けになり、涙すら出なかった。
「....誠、なにしてるの?」
は、と腰を叩きつけ、男性を激しく抱いていた誠が私に気づき、振り向いた。
舌打ちでもしそうな私の知らない誠の視線。
「....見たらわかるだろ、セックス。悪いけど、俺、ゲイだからさ、そのデカい胸見ると萎えるんだわ」
....確かに。
誠は豊胸した私を抱こうとはしなかった。
だけど、
「女の子になったんだし、大切にしないとな」
と、誠は私の裸を見て、たまに触るだけ。
気遣うふり、だったんだ。
私はケーキの箱を落とし、部屋を飛び出し、しばらく走り、疲れた後は蹲り、泣いた。
このことを優太には話してはない。
気持ちが醒めたから、と私は笑い嘘をついた。
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