雨音をさらう虹

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 教室で、二人がたまに話しているシーンを回想していた、次の瞬間――。 「あぁ思い出した!」  突然大声を出した私に、弾かれたように傍から飛び退くこうちゃん。そのままペタンと尻もちをついた。  ちょっと可愛くてギャップ萌え、なんて思ったけど、絶対に言ってあげない。 「なななな、なんやねん、急に! でっかい声出すなや!」  胸に手を当て、飛び出すのではないかというほど、目を大きく見開いた。  その数秒前まで、さっき翻弄(ほんろう)されて赤くなった私のことを、何やら言い知れぬ目で見つめていたなんて、私は当然気づいていない。  私はそのままのテンションで、こうちゃんに詰め寄ると、その鼻先をビシッと指さした。 「こうちゃん、私は知ってんで。一昨日の放課後、宮園(みやぞの)さんと、キスしとったやろ!?」  キスしとったやろ……  しとったやろ……  やろ……  ザァァー……  束の間、洞窟(どうくつ)木霊(こだま)する分だけ、雨音が消えた。  でも、また耳に音が戻ってきたので、もう安心。かと思ったのに、こっちは安心じゃなかった。 「ふぅん……なんや。嫉妬(しっと)しとるんなら、そうやって、はよ言えや。そっかそっか。確かに宮園と俺とお前は、三年間同じクラスやもんな。せやから、ずっと他人行儀に苗字呼びやったんか」 「いや、あの、えっと……」  形勢逆転。  オロオロと後ずさる私。ニヤニヤと意地の悪い笑みを浮かべたまま、勿体(もったい)ぶるように腰を上げて、チェックのワイシャツと、チノパンに付いた汚れを払ったこうちゃん。
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