雨音をさらう虹

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 そのままお決まりのように、背後の壁までジリジリと追い詰められてしまう。が、私は最後の抵抗というように、両手で顔を(おお)った。装束の白衣の袖が、だらしなく垂れるが気にしていられない。  すると、何やら悩ましげなため息が降ってきたかと思うと――。 「ホンマ、なんでこういうときだけ、可愛いねん……」  え? と私は思わず耳を疑う。  ――前半余計やけど、"可愛い"って……まさか私のこと? ……いや、ここには私しかおらへんやん。  一人ツッコんだ後、そっと指の隙間からこうちゃんの顔を見上げると、待っていたように言葉が降ってきた。ただし性悪な。 「怖がってるウサギみたいや……。めっちゃ加虐(かぎゃく)(あお)られる……」  ――カギャ……? 後半なに()ってんのか、よう分からんけど…… 「こうちゃん、動物虐待(ぎゃくたい)はアカンで」 「ちゃうわ、アホ。ただの比喩(ひゆ)に決まってるやろ……って、そんなことよりもやな、宮園(みやぞの)とは別にキスしてへんからな、()うとくけど」  テンポよくツッコまれたかと思ったら、予想外の言葉が返ってきて、私は「えっ、ホンマに?」と顔から両手を下ろす。  ホンマや、とこうちゃんは大きく頷いた。
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