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雨音をさらう虹
「雨、止まへんな……」
私は隣の赤羽に話しかけるともなしに、ポツリと小さく呟いた。
広い洞窟に切り取られた外は、今や無数の透明な線が見える。静かな霧雨は、またいつの間にか、激しい大雨に変わっていた。
ザァァー……
不規則、そしてひっきりなしにコンクリートの天井を打ち付けるものだから、段々と耳がおかしくなってくる。テレビの砂嵐。あれを永遠と聴かされているみたいだ。
やがて私は耐えきれなくなって、わざと明るい声で赤羽に話題を振った。
「赤羽はさ、進路どうするか決めたん?」
三年間の中学校生活も、今年度でおしまい。四月には高校生になっている自分なんて、私はまだ全然、想像がつかない。
みんなも、ダルいとか決まってないとか言っていたから、赤羽もきっと同じだろう。――そう思っていたら、予想外の言葉が返ってきた。
「もうとうに決まっとる。俺、東京行かなあかんから」
「"とうきょう"って、あの東京!?」
「"あの"って、どのやねん。東京は東京や」
勢いよく隣を見上げた私に、呆れたようにツッコむ。
「俺の父さんが、仕事で東京に異動になって、それで向こう引っ越さなあかんくなってん。まぁ、よくある話やろ。――あ、これ言うたんお前が初めてやから、まだ他のヤツには……」
「いつから?」
「……え?」
途中で話を遮られたからか、どこか不機嫌そうに眉根を寄せた赤羽。でも私は、構わず強気に問いただす。
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