雨音をさらう虹

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「"とうに"って、いつから決まっとったん?」 「……去年の冬くらいやったかな」  答えながら、フイと視線を逸らす。  ――"去年の冬"って……  聞いて、私はその事実に愕然(がくぜん)とせずにはいられなかった。  冬ということはつまり、十二月の修学旅行のときには、もう決まっていたのだろうか。  あのときも、あのときも、あのときも……言うタイミングなんて、今までいくらでもあったはずだ。だって私と赤羽(あかば)は――。 「……幼なじみのくせに、アホみたい」  呟いて、どっちが? と思った。  いつもちょっかいばかりかけて、そんな気配なんて微塵(みじん)も感じさせなかったコイツか。それとも、呆れるほど一緒にいたくせに、全く気づかなかった私か。  まるで、一気に海の底まで落とされたようだ。(おぼ)れたように、息が上手くできない。相変わらずザァーザァーと降り続ける雨が、余計に苦しい。  (うつむ)き、立てた膝に顔を埋めようとした、そのときだった。 「"幼なじみのくせに"って、じゃあ聞くけど……」 「えっ、ちょっ……!」  不意に赤羽に右腕を取られたかと思うと、グイと強引に引き寄せられる。 「なんでお前、俺のこと苗字呼びなん? ――この三年間ずっと」  瞬間、ドクンと心臓が大きく脈打つ。  ピチョン……!  雨上がり――濡れそぼった葉から(しずく)が零れ落ちるように、どっちのものか分からない雨粒が、地面に落ちた。
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