プロローグ

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プロローグ

女性視点のリフォームと注文住宅専門の工務店を経営していた母が亡くなったのは、私が大学院修士生の時。 「香坂優里の娘、愛里は君か」 「……はい」 身内だけで執り行われたお寺での初七日の法要に黒塗りのベンツ現れた仕立てのいい三つボタンのスーツを身に纏った母と同じ歳頃の男性が、寺から母の遺骨を持って出てきた私に声をかけてきた。 「私は戸賀弘守。戸賀建設工業で取締役を務めている。昔、優里と付き合っていた。優里が亡くなった今、君の身元後見人として面倒をみる事になった」 突然、父親を名乗る男が現れた。 祖父母は亡くなり母の兄妹から母の遺産を狙われ、法的にどう対応したらいいかわからずに戸惑っていた。 公正証書遺言を生前に残してくれていて成人しているから、財産は全て私に引き継がれる事にはなっている。 だけど、大学院修士生の私には経営者をするには荷が重い。 経営者としてだけでなく個人病院やカフェなどの建築デザイン設計も手掛けていた母は著名な女性設計士だった。 母の会社を継いで女性設計士になる事が私の夢だった。 1級建築士になるために働きながら大学院に通っていた私は、まだまだ未熟な2級建築士。 母の後釜には到底なれない。 「優里の会社 らぶたうんハウジングをこの世に遺したい」 母の会社を守るため、突然現れた血の繋がりがある男を信用し、縋ってしまい、ーー後悔する事になる。
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