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ある休日‥‥
僕は妻と娘の三人で、僕の実家に行くことになった。
実家までは、車で一時間ほどかかる距離だ。
が、両親は既に他界しているので、処分するための整理をするのが目的だった。
実家は二階建てで、一階の奥には親父のアトリエがあった。
親父は生前、趣味で油絵を描いていたからだ。
娘のエリは小学二年で好奇心に満ちた子なので、久しぶりの実家に着くと、はしゃぎだした。
特に一階のアトリエに入り、僕が探し出した『白い窓』という作品を見ると、
「これって何処の窓なの?」
さらに妻も、その絵をジロジロ見ながら、
「ホント‥‥奇妙な窓の絵ね‥‥」
確かに、その『白い窓』という絵は変わっていた。
暗い闇をバックにして、大きな白い窓だけが空中に浮遊しているような作品だったからだ。
僕自身、好きな絵だったが、絵ごころが無いため、
「まぁ‥‥そのへんの窓だろう‥‥」
「へー‥‥そうなの‥‥」
エリは、そう言いながら、その絵を見詰めていた。
「コーヒーでも飲もう」
と僕が妻と一緒にキッチンへ行こうとした時、エリが、
「あっ、窓が開いてきたー!」
僕たちは思わず「えっ!」と振り向いた。
すると少し開いた窓から、雨音が聞こえてきたのだ。
僕はエリの傍に行くと、
「おじいちゃんが来てるよ」
「えっ、なんで?」
「おじいちゃんの名前が、雨彦だからさ」
――おわり――
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