代償

2/8

82人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ
    ◇  ◇  ◇  成美には恋人がいた。  大学に入ってすぐに告白されて、付き合い始めた彼。  初めての交際で、経験がないからこそしばらくは誰かに話していいものかも判断できずに躊躇していた。  学生時代の恋愛なんて、どこまで続くかわからない。  舞い上がって吹聴したはいいが、すぐに別れてしまったら? 「別れた」といちいち報告するのは気が重い。かといって見栄を張るのも虚し過ぎる。  自信がなくて、常に最悪の事態を想定して身構えてしまっていた。  それでも丸二年の記念日を迎えたあたりから、自然と互いの友人にも会わせようという話になる。もしかしたらこのままこの人と、となんとなく感じ始めたのもその頃だった。  成美も彼も、どこかで心を決めていたのかもしれない。  中学時代からの親友だったあの子には、当然ながら真っ先に紹介した。  大学は別になり会う機会も減ってはいたが、頻繁に連絡を取り合う仲に変わりはなかった。恋人がいることも彼女にだけは早いうちに打ち明けていた。「会わせて」という懇願には、簡単には頷けなかったのだけれど。  だからこそ喜んでくれると思っていた。いや、喜んでくれてはいた。少なくとも表面上は。  ──最も心を許した二人に裏切られるなんて、まったく考えてもみなかった。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

82人が本棚に入れています
本棚に追加