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どちらにしても、彼とはもう終わりだ。
真剣なら言うまでもないが、一時の気の迷いだったとしても今更受け入れられない。「彼女の友達」に、たとえ一瞬でも靡くような男なんて。
「まさか私の友達にまでやるなんてね。あんた、あいつにいくら貢いだの?」
ちょっとした意趣返しのつもりで吐いた成美の台詞に、彼女はさっと蒼褪めた。
「何、……何、言って。あたし、だって、そん、そんなまさか──」
目に見えて狼狽える彼女に溜飲が下がる。
彼は女から金を巻き上げるような男ではなかった。
それは確かだと胸を張って断言できる。二年以上付き合った、愛して信じていた成美の恋人は。
ただ、少し注意力散漫なところがあるのは否めなかった。
彼はよく財布やパスケースを忘れては、その場で必要な費用を安易に借りて済ませようとする。
次に会ったときに丁寧な謝罪と礼と共に必ず返してくれるので、成美も「しっかりしてよね」と苦笑する程度でしかなかった。
懲りずに何度も繰り返されて、もうこれは性格の問題で治らないと諦めていたのだ。
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