代償

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 それどころか、見た目もよくあらゆる意味でハイスペックと評して差し支えない彼の数少ない欠点も、可愛いとさえ感じていたくらいなのに。  しかし彼女はそんな事情をまだ知らないだろう。そして、この様子だと彼に金を貸したことがあるのはまず間違いない。  成美の出任せだというのはすぐに露見するだろうが、この二人に「騙した」と責められる謂れはないし、罪悪感など覚える筈もなかった。  ──せめて短期間だけでも、苦しめてやらなければ気が済まない。 「最初はちょっとした金額ですぐ返すから、つい相手も油断しちゃうんだよね。今まで田舎の親がだいぶ後始末してきたみたいよ。だから大きな問題にはならなかったんだけど」  そのうちエスカレートして行く、と成美は言外に告げた。  我ながらよくもここまで、と思うほど、次から次へと滑らかに口をついて出る作り話。  言葉を失くした彼女を内心で嘲笑いながら、自分はこういう人間だったのかと頭の片隅で他人事のように考えていた。
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