代償

7/8

82人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ
    ◇  ◇  ◇ 「成美ちゃん、お天気悪いけど大丈夫? よかったら私、お家に遊びに行こうか? ──まだ半年も経たないし、その」 「ううん、親もいるし平気よ。でもありがとう、嬉しい」  わざわざ電話を掛けて来てまで気遣ってくれる友人に、心からの感謝を告げる。  流石にはっきり口には出すことはないものの、彼女が『何』を心に浮かべているのかはよくわかっていた。  雨は、特別。  成美をよく知る皆が共有する事実だ。  両親も交互に部屋を覗きに来て、電話中の姿に安心したらしい。さり気なさを装いながらも緊張が隠し切れない二人の姿に、愛されていると実感する。  ……あの直後は雨天のたびに取り乱して、親にも友人たちにも心配を掛けてしまい申し訳なかった。  不安定だったのは、今にして思えばほんのひと月足らずだったのだが。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

82人が本棚に入れています
本棚に追加