完璧な兄

11/12
13人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
 電話の向こうで兄が言う。 「俺なんかがまさか結婚出来るだなんて思ってもいなかった。俺にはお前の様な社交性もなければ闊達さもないからな。……実は言うと俺は幼少よりお前の強さや優しさ、自信に溢れた積極的な態度を羨ましく思い憧れていたんだ。──俺も少しはお前の様になれただろうか?」  それを聞いて、思わず吹き出して笑いそうなった。  俺をそんな風に思っていただなんて、おくびにも出さなかったじゃないか。 「俺達は兄弟だが別の人間だ。俺はお前の様になれないし、お前も俺の様にならなくてもいい。だがお前がいい意味で変わったのは確かだと思う。……だからこそもう二度と“俺なんか”とは言うな、義姉さんが悲しむからな」  そう言うと、兄は……。 「そうだな、お前の言う通りだ。いちいちいいことを言う。お前の様な立派な弟を持てて俺は兄冥利に尽きるというものだ」  ……全く、人の気も知らずに言ってくれる。だから俺はこう返してやった。 「当然だろう? 俺、だからな」
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!