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だからといって俺が兄を嫌っているのかというとそうではない。俺達は“仲のよい兄弟”だと互いに認識している。
兄は頭がいいはずなのにどこかぼんやりとしていて、放っておけない。その上、他人のことはおろか自分にすら興味がないので己を大切にしない。そんな兄をサポートするのがいつしか俺の役目になっており、兄も俺を頼りにした。
俺が兄へのコンプレックスでグレなかったのは、おそらく兄がどんな些細なことでも俺を頼ってくれたからではないだろうか。天才の兄に頼られるのは、素直に嬉しかったのだ。
兄は大学在学中に小説家としてデビューした。幼い頃から読書家ではあったが、まさか小説を書いているとは俺も両親も寝耳に水であった。
デビュー作は飛ぶように売れ、当然の様に映像化された。更に兄の容姿が弟の俺ですら見惚れる程の美しさだった為、ファンも多く獲得した様だ。
順風満帆な作家人生に漕ぎ出した兄を俺は心の底から祝福して応援した。
兄に対しては若干の苦手意識はあるが、やはり憧れの気持ちの方が強いのかもしれない。まぁこんなこと、本人には言ってやらないが。
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