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どのくらいそうしていただろう、不意にドアが開き君が姿を現した。
赤く泣き腫らした目、足元もおぼつかないようだ。
鍵が開けられ、僕は慌てて飛んでいって君を支える。
どうしたんだ?やっぱりいじめられたのか?
そんな奴は許さない、僕が···
と、不意に君が僕を抱きしめた。
その瞬間僕の心臓は爆発し、早鐘を打つ、なんて表現では足りないほどに鼓動を早める。
最近とんとご無沙汰だったスキンシップ。
僕がいくら望もうと君が応えてくれることはなかった。
頭の中が真っ白になってしまった僕はそのまま君の部屋に導かれ、君のベッドに腰を下ろした。
久しぶりの君のベッド。
僕が粗相をして以来、君は僕がベッドに乗ることを許してくれなかった。
柔らかなベッドの感触に先程までの怒りも心配も吹き飛んで、恥ずかしながら僕の中は浅ましい欲と熱に支配されてしまう。
君の白く細い指が僕の体を優しくまさぐる、久しくなかった感触だ。
やっぱり僕は君が好きだ、もっと触れてくれ。
すると不意に体中を快感が駆け巡り、僕は君の手を汚してしまった。
あぁ、それは···、僕はバツが悪くてたまらなかった。
君は驚いたようだったが、怒ることもなくそれをティッシュで拭いて片付けてくれた。
そうして2人でくっついて過ごすうち僕は君が愛おしくて堪らなくなり、君に穏やかな愛の歌を贈る。
君は未だ赤みの残る瞼を閉じてその歌にじっと聞き入ってくれる。
君が僕の歌を聞いてくれている事実が、先程までの欲望とは違った胸の高鳴りを生む。
君と出会った瞬間から、僕の歌は君だけのものだ。
僕と君は愛と歌を交わしながら、朧月夜の光のように穏やかで優しい、素晴らしい夜を過ごしたのだった。
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