雨の日の二人

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   雨が降っている。止む気配はない。 「なあ。こっち来ないか?」 「サトシが来れば?」  喋ったせいか、少し動いてもいいか そんな気持ちが二人に生まれていた。でも、それはまだ熱を帯びていない。  雨の音が 耳に心地いい。 「腹、減ったなぁ」 「うん。買い物しとけば良かったわね」 それでも動かない二人。  多分、もう少し経てば、どちらかが どちらかのベッドに移動するだろう。そしてひっそりと動き始め、しなやかに背中が動きお互いを求める熱が生まれ、喘ぎ、欲し、雨の音も聞こえなくなる。  きっと聞こえるのは、相手の息遣いだけになるだろう。  でも、今は雨の音でいい。今はそれで満たされている。二人はその毛布の中で、ぬくぬくとうっとりしていた。  たまには こんな日も いいもんだ。      
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