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「雨ねぇ」
「雨だなぁ」
音は、それだけ。多くの会話も要らない。
また目を閉じる。今は明日のことも、テレビをつけることも意識の外に追いやっている。
そうだ。車は久しぶりの雨に、その砂埃を落としてもらってるだろう。きっと同じように雨に浸っているに違いない。
「そういえばさ」
「ん?」
「子どもの頃って、傘持ったことなかったな」
「そうだったっけ?」
思い返してみる。幼馴染みの二人。学校の帰り雨。夕立は濡れるのが当り前だった。土砂降りならどっかの下で雨宿り。どんどん暗くなる夕方なら、走って帰った。
そんな子供の頃を思い出す。
「朝降ってなかったら持っていかなかったなぁ」
「そうね、うん、そうだったわ」
「子どもだったしな」
そう考えておかしくなった。
「なに?」
「いや、今なら折り畳み傘を持つと思ってさ」
彼女は吹き出した。
「大人だもん」
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