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「そうだっけ?」
「そうよ。大丈夫、大丈夫って連発して。おじさんが帰って来た時には相当熱、上がってたでしょ?」
その辺りの記憶はあいまいだ。
「で、おじさんはさっさとサトシに荷物渡して奥に行こうとして」
「ああ! お前がキレた時か」
記憶がおぼろに蘇る。キョウコのお母さんが入院して、しばらく一緒に暮らしていた頃。
酔った父は子どもの顔なんか見もせずにさっさと奥に行こうとした。それを見た途端に、キョウコが父に怒鳴りつけた……
『少しはサトシの顔見たら!? 何も分かんないの!?』
「お前、小さかったのに、よく親父に盾突いたな」
「なんか腹が立ったのよ。サトシのこと、なんだと思ってるのかってね」
でも父は怒るよりも、何があった? という顔をしていた。そして、額に手を当てたんだ。
「あれから親父、ちょっと変わったよな」
「ちょっと だったけどね。飲んべは変わんなかったわ」
二人とも笑っている。
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