雨の日の二人

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  「雨だな」 「雨ね」  なんだか、ぽわんとしているベッドの中。お互い、自分のベッドから窓の外を眺めている。  起き上がるのがかったるい。我ながらよくカーテンを開けたもんだ とサトシは変な感心をしていた。  2階から見る空から落ちる細い透明な線が重なってきれいだ。珍しく、新聞を取りに行く気にもならない。 「ん~ん」  向うでキョウコが伸びをしているのが分かる。つられて自分も  「ん~ん」 「なぁ」 「ん?」 「買いもん……」 「行かないわよ」 「食うもん無いだろ」 「サンドイッチなら残ってるわ」 「あれ、ツナ」 「他に無いから」 「行って来いよ」 「イヤよ」  そんなやり取りも、正直言ってなんとなくの会話だ。どちらも動く気はない。ちょっぴり肌寒くて、毛布に首までくるまれているのがとにかく心地良い。その中でもぞもぞすると堪らなくほのぼのしてくる。  やることがあると言えば、ある。でも、それは明日でも構わない。   
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