はじめに

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はじめに

栗花落虹遥(つゆりこはる)はどこにでもいる活発な女の子で人見知りせず人懐っこくて誰からも愛させる女の子として近所でも有名だった。 広島県の都会でも田舎でもない縞ノ(しまのうち)というところに住んでいる。 虹遥自身、保育園の時から男の子だから女の子だからと関係なく分け隔てなく遊んでいて先生からもとてもいい子ですね、困っているお友達がいれば積極的に声をかけて優しくてこちらも助かっていますと先生たちは迎えに来たママに伝えていた。 その話を聞いてママも笑顔で頭を下げて虹遥の手を握って家に帰る。特にこれといって何かに興味を持っている訳ではないが友達と遊ぶことに喜びを感じていた。 ある日、虹遥の家に近くに引越しをしてきたとご挨拶に訪れたとある家族がやって来た。 君島と言います、ご迷惑をおかけすると思いますがよろしくお願いします。遥那も挨拶して。 「初めまして、君島遥那(きみじまはるな)と言います5歳と頭を下げた」 5歳って虹遥と同い年、さっきまでお母さんの後ろに隠れていたけれど人見知りなのかな?同じ保育園なのかなと思っていた。 だが虹遥と遥那は別の保育園で一緒にいれたらよかったのになと肩を落とした。 そんな虹遥だがいくつか困った点がある。 それは病院に行った時に栗花落が珍しい名字のために正しく呼ばれることはない。 そして初対面の人には栗花落は名字ではなく名前だと思われて名字は何?佐藤さん?鈴木さん?そう聞かれることが多かった。そのため虹遥ちゃんと呼ぶ人もいれば栗花落ちゃんと呼ぶ人と二極化している。 意地悪さえしなければいい、来てくれる子には仲良くするし1人でいて寂しそうな子がいればひとまず声をかけてみて1人がいいのっていう子にはこちらから声をかけることは特にしないスタイルでいる。 虹遥は地元の縞ノ内北小学校に入学する。 小学生になってお友達も沢山できて毎日が楽しくて仕方ない。ここでも虹遥ちゃん、栗花落ちゃんと分かれていて放課後になると縄跳び、一輪車と外に行くこともあれば図書室に行って本を読む時もある。インドア、アウトドアと特化しているわけでもなくどちらにも興味を持っている女の子だった。 低学年の時は気にしていなかったが4年生になるとあることに気がつく。 「栗花落虹遥」 この名前は自分が思っているよりも画数が多くてテストで書く時に時間がかかる。もっと画数が少ない漢字なら早く問題に取りかかれるのにな、パパとママがせっかく付けてくれた名前だからどういう意図で名付けたのか聞いてみよう。意味を知れば自分の名前に誇りを持てるかも知れない、そう考えていた。 家に帰ってパパとママに理由を尋ねた。 どうして虹遥って漢字にしたの? 「虹のように人を感動させて大きな夢に向かって欲しいっていう思いだよ」 それを聞いて虹遥はみんなに笑顔で自分の夢に向かって頑張っていこうって考えるようになった。 翌日、改めて虹と遥について漢字辞書で調べた。 虹 雨あがりの空や滝などに七色の橋が架かる現象 遥 遠くまで眺望が開けているさま。 こうやって自分の漢字を調べるといい字を付けてもらったと漢字の理由について尋ねられた時は誇りをもって答えていた。 虹遥と遥那は中々同じクラスになることはないが放課後に遊んだり、お互いの家に来て遊んだりしていた。お互いに早く一緒のクラスになれるといいね、そう話していた。
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