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「彩さんの性格って、どんな感じ? 見たところ、正直そうだけれど」
「はい……すごく単純で、なんでも信じちゃうタイプで。ひとから良く、騙されやすいって言われます」
ふと、東雲の後ろに立っている鶴田に目を向けると、鶴田はビクッとからだを震わせた。
「なるほど……じゃあ今度は、俺の紹介をするね。基本的なスペックはさっき聞いたと思うけど、性格は自分でも優しいほうだと思う。見た目がこんなだから、なかなかそう思われないみたいだけど」
「いえ……」
「趣味は、仕事かな。酒もタバコもやらないし、つまらない人間かもしれない」
そうなんだ……。
「でも、食べることは俺も好きだよ。そこは彩さんと一緒だな」
東雲はそう言って、微かに口元に笑みを浮かべる。
その言葉、その表情を見たとたん、彩の心は、猛烈にかーっと熱くなった。
「他に、聞きたいことある?」
「いえ……今のところ……」
すると東雲は、足を組むのをやめて椅子にきちんと座り直し、背筋をすっと伸ばした。
「では、結論から言うね。俺は、彩さんとお付き合いしたいです」
ええっ! まだ出会って数分なのに、もう!?
彩が口を開けて呆然としていると、東雲は首を傾げた。
「俺じゃ、駄目かな?」
いや、そうじゃなくて……あまりに急展開過ぎるって言うか……。
「……ほ、本当に私なんかでいいんですか?」
そう答えるのがやっとだ。
「もちろん。俺は、彩さんが気に入った。付き合いたい」
「わ、私もです……」
もみ手をしながら鶴田がひょこひょこと前に出てきて、彩と東雲、両方の顔を交互に見つめた。
その表情は、嬉しさと戸惑いに満ちている。
「……そ、それでは、双方のお気持ちが確認できましたので、次は『仮交際』に進めさせて頂きたいと思いますが」
だが、東雲は首を横に振った。
「いや、俺としては早く結婚したいから、『仮交際』を飛ばして『真剣交際』に進みたい」
「えっ? いきなり真剣交際ですか!?」
一般的な結婚相談所の婚活の流れとしては、お見合い→仮交際→真剣交際→プロポーズ→成婚、である。
東雲は、そのうちの仮交際を省くと言うのだ。
「彩さんも、それでいいよね?」
そう聞かれて彩は、はっと気がついた。
東雲さん、1ヶ月以内に結婚したいとか言ってたよな……。
「あの、東雲さん」
「うん、なに?」
「なんでそんなに、結婚を急いでいるんですか?」
すると、東雲は一瞬、戸惑ったような表情を見せた。
「それは……俺ももういい歳だし……結婚したいと思った時に、早く行動すべきかと思ってね」
ふうん、男のひとって、そういうものなのか。
彩は素直に、その言葉に納得したのだった。
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