青の魔女は王子と結ばれる事を望まない。

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 いくら我が魔女であったとはいえ、滅多な事で他者に魔法は使わん。これは単なる我のポリシーでしかないが。簡単に魔法には頼らんのじゃ。  しかし、王子と結ばれるなど、嫌に決まっておる。背に腹は代えられぬ。今日は断罪イベントの日。もう我には後がない!  ここ最近、雨が降らずして、大規模な魔法は扱えず、何もできずでドギマギしておったが、今日、雨が降っておる!  待ちに待った雨音に我の身体は歓喜に包まれておる。今日の我は無敵じゃ!  じゃから、今日!我は魔法を使う。それはもう大規模に使っちゃう!出し惜しみはせぬもん!!ちょうどこれから断罪イベントが起きそうで都合が良い!  しかし。  ちぃとばかり、迷いものじゃ。  王子の我に対する恋心を消す?しかしじゃな。王子は王太子ではあるが、王の器にはなく、授業をサボって我の元に来ようとするようなうつけ。あんなのと公爵令嬢が未来の国を担うなど、優秀な公爵令嬢があまりに気の毒じゃ。何とか王子を失脚させ、第二王子あたりをあてがえんじゃろうか。  断罪イベントをやらせ、逆ざまぁを施行し、第二王子に王太子の座についてもらう。そして、公爵令嬢は第二王子の婚約者に。  ふむふむ。こちらの方が良いのではないか?  ふむ!  やはり、邪魔でバカでうつけな王子は消し去るに限るか!目障りだしのぉ。  方向性を決め、耳に届く雨音に胸躍らせ、上機嫌に我は場に魔力を行き届かせて行く。  ふふ、この場はもう、我の手中。我が支配下じゃ。  雨音で高められた我の気持ちがさらに高まっていくのを感じる。気持ち良い限りじゃ。やはり、雨は好きじゃ。 「お前にはとことん失望した。王太子の婚約者として恥ずべきことを繰り返したな?」  我が方向性を決めたところで、断罪イベントがはじまっておった。  気安く我の腰を抱いて立つ王子。離せと訴えても聞きやしない。  王子の周りには将来国のトップを固めることが約束されている奴らが集合しとる。対面する形でいるのは公爵令嬢が1人。  王子は自身が絶対的に有利な上で、公爵令嬢が我を執拗に責めただの、他の令嬢達に指示に物を隠したりしたのだとか偉そうに告げていく。  罪人に罪を告げているつもりかもしれぬが、執拗に責めたことについては事実を誇大して言うておるし、物を隠したり壊したりしたことについても外聞ばかりで証拠はない。これで人を、それも貴族を裁こうというのだから、頭が緩い。  公爵令嬢は背筋をピンッと伸ばし、決して狼狽えることなく、冷静な様子で王子の一方的な責め言葉を聞いていた。  いや、冷静を装っているだけか。胸元で扇子を握る手に力がこもっている。公爵令嬢が恐怖をもったとしても、なんら不思議はない。それを表に出さぬようにするとは……やはり、公爵令嬢は出来た女子(おなご)じゃ。  凛として立つ姿にはいつも既視感を感じておった。ゆえに、妙に肩入れしたくなるんじゃがな。  ここらが終盤か。ここから逆ざまあをはじめてやろうぞ。……我が魔力を操ろうとしたその時、鈴を転がしたような軽やかな笑い声が場に響き渡った。
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