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ツッタカター・ツッタカター③
「もし・・・もし・・・」
サラ金に追い詰められていたせいか電話の着信音が怖い。スマートフォンは凶器のようにも感じる。電話番を別に雇ってくれればいいのにとも思う。だが、それは言えない。また、殴られる。
消費者金融業者も大手は、追い込みも優しいが大きな会社だと直ぐに給料を差し押さえする仮処分が待ってる。仮処分っていうくらいだから、本処分もあるのか?分からねぇ・・・
場末の金融屋は時に優しい言葉もかけてくれる。
「お仕事、頑張って下さい。応援しています。」
声が若く、まだ、青年の言葉だったと思うが電話を受けながら俺は彼の言葉に胸を打たれ泣いた。本当に地獄に仏だ。
声をかけたくれたサラ金会社の支払いは欠かさず返済していた。金利はトサンだったが構わなかった。喜んで銀行に振り込んだ。俺は電話に出た。
「おい!晴海のホテルの客がヤバい。クスリ打ってる可能性がある。眼がテンパってると言われた。部屋に走れ!オンナがヤバい。俺も事務所から直行する。」
「分かりました。ホテルの部屋、行きます。」
「念の為、お前、バール持っていけ!急げ!」
「はい!テンチョー!」
俺はバンの中にいる女たちに声をかけ、ビジネスホテルに急いだ。最近は性欲を高めようと、覚醒剤を食う輩が増えたと言う。覚せい剤等、クスリの価格がコロナ禍で下落して、ガキも簡単に手が出せる金額になったとテンチョーに聞いたことがあった。
俺は肉がタップリと付いた腹を抱え走った。傍からは早歩きしてるとしか思えない歩みだったが、俺の中では全力疾走だ。
最悪、ドアを叩き割れるようにバールを黒のキティちゃんのトートーバッグに忍ばせ持ってきている。
フロントに近づいた。訳を話して鍵を直ぐに開けてくれるホテルは少ない。むしろ少数だ。だから声をかけられないように中を伺う。俺の事を不審に思われなければそれで、OKだ。
俺はホテルのロビーを慌てずゆっくり進み、エレベーターホールへと歩を進める。この時の為に身綺麗なダブルのスーツをカイシャから支給されている。スーツ代も給料から天引きだが。
エレベーターに乗って、2人が留まっている部屋へと急ぎ足で行った。
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