土砂降りを待っていた

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梅雨の終わりが近づいたらしい。 外は土砂降りの雨。 その雨音に消されぬ様に片耳を抑え今日来るはずの琢磨の声を電話越しに聞いていた。 「あっ、摩耶か……ん?そっちに行くの?明日だよ」 その声の向こうは雨音と道路の水を弾きながら走る車の音がする。 その音が嘘を教えてくれていた。 「あ、あれ?そうだっけ?……そうだ!琢磨のモスグリーンの傘、買っておいたよ」 気づかぬふりをして話を続ける。 「えっ?」 「だって言ってたじゃない楽しそうにマンションに向かう道で『傘はモスグリーンが好き』って……聞いてたよちゃんと。じゃあ明日ね」 無理に明るく電話を切った。 父はギャンブル、母はアルコールから抜けられず欲望の沼にはまり身を滅ぼした。 私は違う。幸せになる為にやっと出会えた運命の人を愛し続ける……と決めていた。 それなのに……天気予報を見ればわかる、あなたのいる街は晴れのはず……。
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