土砂降りを待っていた

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家に着き、モスグリーンの傘の隣にワインレッドの傘を置く。 いつも通り無意識にテレビを点けていた。 夕方のニュースで感情の無いアナウンサーの声が流れている。 「今日の昼頃、練馬区のマンション前で若い男女二人に対する殺人未遂事件がおきました。被害者の女性の話しによりますと犯人は女性の知人で……」 私は口元だけで笑った。 「男性に執拗に付きまとっていた女だと言う事です。凶器は傘……」 雨音だけを聞きたくてテレビを消した。 その音を書き消す様にサイレンの音が近づいて来る。 音が止まった。 窓の外を見ると風にあおられた雨が赤いカーテンの様に揺れている。 「きれい……」 窓に映る私の顔はちゃんと笑っている。 ――抜け出せなかった欲望の沼―― ―これでやっと終せられせられる― 完
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