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私には、確かに私を飼っている『お母ちゃん』は居た。
居たのである。
それも、だいぶ前だが。
あの日が無ければ・・・
あの日・・・
台風による記録的な豪雨の影響で土砂崩れが家を襲い、お母ちゃんとその家族は、この家から避難してから1ヶ月が経っている。
お母ちゃんの帰りを待っても待っても、二度と帰って来ないんじゃないか・・・?
もうお母ちゃんは私をかまって、ネコジャラシやら、ネズミのオモチャやら、小さいボールやらでちょっかい出して一緒に遊んでくれる事も二度と無いかも知れない。
その他家の人達みーんな仕事やら学校やらにも関係無く、この家にひとりも居ない。こんなに壊れた家なんか帰ってくる訳では無い。
誰も居なくなって、朽ちて荒れ果てていく私の家。
そのうち、度重なる雨漏りや風雨がこの家を腐らせ、壊していくだろう。
泥だらけの猫つづらに踞って、孤独飢えに耐え続ける私。
ざぁーーーーーーーーーーー・・・
ぽとん、ぽとん、ぽとん、ぽとん。
ぽとん、ぽとん、ぽとん、ぽとん。
雨音が、雨漏りの音が、
リズムを、私を虹の橋へと導くリズムを穿つ。
ざぁーーーーーーーーーーー・・・
ぽとん、ぽとん、ぽとん、ぽとん。
ぽとん、ぽとん、ぽとん、ぽとん。
身体がひとりでに動き出す。
雨音のリズムに乗って・・・その幻覚の中で・・・
ざぁーーーーーーーーーーー・・・
ぽとん、ぽとん、ぽとん、ぽとん。
ぽとん、ぽとん、ぽとん、ぽとん。
ぱぁーーっ・・・
眩しい光!!スポットライトだ!?
そう・・・お迎えが来たんだわ。
私はこの雨音の喝采をバックに、今正に私の猫生のカーテンコールを受けるのよ・・・!!
ありがとう!そしてさよな・・・
えっ!?お母ちゃん!!
「たまこ!!生きてて良かった!!あんたを置いて避難してごめんね・・・!!」
私はレインコート姿でずぶ濡れの飼い主のお母ちゃんが、私を抱いた。
突然のサプライズに、私の為にまるで周りが雨音の拍手喝采にあふれていた。
~雨音は猫の調べ~
~fin ~
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