粉瘤パフェ

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粉瘤パフェ

ぶりゅ、ぶりゅと脂ぎった男は息を荒くして絞り出す。 時々それは柔くクリーミーで殆ど液体の時もある。 更にはもちっとした弾力で。 リボンのようにそこからひだ状で溢れ出すこともあった。 「ゔ、ぅ…」 夏菜子は男がそれを可愛らしいピンクのパフェグラスに注いでいく姿に吐き気を催しながら見守る。 「鼻の頭のが一番熟したやつだから…」とニタリと笑った歯は黄ばみと虫歯で悪臭を放つ。 それは学校から家に帰宅する途中だったと思う。夏菜子は友達と別れ、一人とぼとぼと歩いていた。 人気の無いそこの道を歩いていると、前方から『爆弾ジジイ』と呼ばれる小太りの男が前からやってきていることに気がついたのだ。 それは鼻の頭に大きな出来物があったから付けられた渾名ではない。よく学生が通る道で女生徒に向かって『爆発する!爆発する!』と叫んでいた事が由来だ。それに爆弾ジジイは真夏でも黄ばんだ元々白だったであろう長袖で、脂ぎっていたので学生の間では有名だった。 その爆弾ジジイに夏菜子は(最悪…)と眉をひそめてそそくさとその横を通り過ぎた。 それから、…それからの記憶は夏菜子にはない。目が覚めて汚い畳の上で芋虫のように手足をグルグル巻にされて転がっているという最悪な状況を飲み込めないままでいた。
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