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ナターシャと雨音
毎週土曜日は、親友の灯とオンライン飲み会が恒例となっている。私からスマホに電話をかけると、彼女は少し遅れて電話を取った。家電にかからなかったので少しだけ心配したが、特に何かあったわけではなかったらしい。
『ごめーん瑞帆っち!あたしお風呂入ってたからさ、電話取りそびれちった』
「なんだー。ていうか、八時からなのわかってるじゃん。それまでに風呂から出てきなよね?」
『ごめんごめん。思ったより髪の毛洗うのに時間かかっちゃってさ。あたしも瑞帆っちみたいに髪の毛短くしようかなぁ。長いと洗うのに時間かかってマジめんどくさいじゃん?』
「ええ?せっかく綺麗な髪なのに勿体ないー」
灯とは、高校時代からの付き合いだった。そのまま同じ大学の同じ学部に入り、同じサークルにも入り。こうして互いに一人暮らしをするようになってからも交流を続けているのである。主にこの土曜日の深夜恒例のオンライン飲み会と、年賀状のやり取りがメインだったが。
「ていうか、私はいつもどおり三十分も前からパソコンの前で待ってるのに。なんでログインして来ないのよ」
私がちょっと怒って言うと、向こうも失態を理解しているからか“本当にごめんってばー!”と平謝り状態である。元々ルーズな性格の灯なので、私も言うほどは怒ってないのだが。
『実はパソコンがつい最近ぶっ壊れちゃってさ。使えなくなっちゃったんだよ』
「ええ?早く直しなよ、困るでしょ。それにそれならそれで教えてくれればいいのに。ていうか、Twitterは普通に更新してなかった?」
『言い忘れてたの、バタバタしてたから!Twitterはスマホからできるからいいんだよー。いやぁ、ほんと災難だったわ』
「もー」
災難と言えば、確かにここ最近の彼女はツイてないなという雰囲気ではある。だからこそ、たくさん相談したいこともあるだろうと踏んで、私は早めにパソコンを立ち上げて待機していたのだ。まさか、彼女のほうが遅刻してくると思っていなかったが。
「ていうか、ホント大丈夫?今日はやめとく?」
お酒は用意してあるし、なんならもう空けてしまってはいるが。まあオンライン飲みができないなら、一人で寂しく飲むだけのことである。飲み会とは建前で、なんだかんだお互い一人暮らしで寂しい気持ちもあるからやり取りをしている面が強いのだ。
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